ユネスコ世界記憶遺産に登録するよう求める署名に賛同してください。
2014年、私たちは日本軍「慰安婦」関連資料のユネスコ世界記憶遺産(「世界の記憶」)への登録を目指して、その実現に向けた取り組みを開始しました。韓国、日本、中国、台湾、オランダ、フィリピン、インドネシア、東ティモールなど8カ国14団体が、<日本軍「慰安婦」関連記録物のユネスコ世界記憶遺産共同登録のための国際連帯委員会(以下、国際連帯委員会)>を結成し、活動を続けています。2016年、国際連帯委員会は、英国の王立帝国戦争博物館とともに、計2,744件の記録物を<日本軍「慰安婦」の声(Voices of Comfort Women)」というタイトルで、ユネスコ世界記憶遺産への登録を申請しました。2017年2月、これらの記録物は、ユネスコの登録審査小委員会(RSC)において「唯一かつ代替不可能な(unique and irreplaceable)」資料であるとの評価を受けました。
2016年、日本の右派系団体らが、私たちの申請した記録の登録を妨害する目的で、日本軍「慰安婦」関連の資料6件を、ユネスコ世界記録遺産に登録申請しました。その内容は、日本軍「慰安婦」は強制動員されたのではなく、性奴隷でもなかったというものです。2017年10月、ユネスコ国際諮問委員会(IAC)は、この二つの申請内容が衝突し合うと見なして、世界記憶遺産の登録決定を見送り、第3者による仲裁を通じて、両申請当事者間の対話が必要であると決定しました。その背景には、日本政府が私たちが申請した記録の登録を阻止するために、ユネスコに対する国家分担金の拠出を停止すると脅したり、様々なロビー活動を繰り広げたことなどがありました。ユネスコは、ユネスコの精神に則って公正を保たなければならないにもかかわらず、規則にもない対話を勧告したのです。2020年現在、未だにその「対話」プロセスは進められていません。
私たち国際連帯委員会は、ユネスコ事務局によって進められる対話プロセスに誠実に対応します。
国際連帯委員会は、ユネスコ事務局がユネスコの精神に則って公正かつ迅速に「対話」プロセスを進めるよう求めます。
国際連帯委員会は、日本の申請団体もユネスコの対話プロセスに誠実に取り組むよう求めます。
日本が人権を尊重する国であるならば、日本軍「慰安婦」関連の記録がユネスコ世界記憶遺産として登録されることを妨害してはなりません。 <日本軍「慰安婦」の声>は、痛みと苦しみを乗り越えた被害者が、人権と名誉を尊重されるべき存在であることを、小さくても力強い声で世界に示しています。皆さんも一人ひとりの声で、日本軍「慰安婦」関連記録をユネスコ世界記憶遺産として指定することは、人類が保存するべき人権回復の歴史を記録して記憶する方法であると、アピールしてください。
日本軍「慰安婦」とは、第二次世界大戦当時、日本帝国によって強制動員され、性奴隷のような生活を強いられ、被害を受けた女性たちを指します。被害者は、日本帝国の植民地にされていた韓国(朝鮮)、台湾をはじめ、中国、インドネシア、フィリピン、マレーシア、ベトナム、タイ、東ティモールなど、占領地や戦地であったすべての地域から出ました。もちろん、日本人も含まれていました。戦争が終わった後、彼女たちは現地に置き去りにされたり、隠された存在として扱われてきました。
1980年代末から始まった社会主義圏の変化やその後のソ連解体により冷戦が終焉し、欧州とアジアでは民主主義と人権を尊重する機運が高まり、第二次世界大戦による被害者の人権回復や歴史的評価の問題が新たに浮上しました。冷戦の最大の被害国であった韓国でも、長らく続いた軍事独裁が終わり、民主化が進みました。そして、「人権」が語られ始めました
1991年、日本軍「慰安婦」被害者の金学順(キム・ハクスン)さんが勇気を出して名乗りを上げました。植民地、性的被害、貧困、女性、高齢などの中で社会的に最も弱い位置に置かれ、その被害を重層的に経験しながらも耐えてきた金学順が、自ら被ったすべての被害は「私の過ちではない」ということに気づいたのです。この短い一言の声が、オランダ、台湾、中国にも届き、「私も同じ被害者だった」と名乗りを上げ、連帯するようになりました。各国の市民はこの声に共感し、日本軍「慰安婦」被害者の「人権回復」運動に共に取り組んできました。彼女たちは日本政府の心からの謝罪、責任、そして教育への反映という約束を引き出すために努力してきました。この運動は、アジアの女性の人権を向上させる上で多大な貢献をしてきました。
日本軍「慰安婦」被害者の真実を伝えるための証言、そして、その証言を重く受け止め、日本政府の真心の込められた謝罪を求めて展開されてきた運動などは、戦争によって破壊された「人権」を回復するための人類の大切な努力です。
ユネスコは、以下の基準により遺産としての世界的価値を判断し、2年に一度ずつ「世界の記憶」を決定してきました。
1)(Time):歴史的に意味のある時期を理解する上で重要、またはその時期を特別な方法で反映する資
2)(Place):世界史または世界文化の発展に貢献した地域に関する情報を有する資料
3)(People):世界史または世界文化に貢献した人物に関連する資料
4)(Subject/Theme):世界史または世界文化の重要な事柄を記録した資料
5)(Form and Style):優れた美的様式を示している資料
6)(Social/Spiritual/Community Significance):優れた社会的・文化的または精神的価値を有する資料
その他の基準として、真本性、唯一性、影響力などがあります。唯一性と影響力は、登録される遺産が唯一かつ代替不可能であることを意味します。また、その遺物が損失または毀損されれば人類に莫大な損失をもたらすもので、一定期間の世界の特定の文化圏において歴史的意味を持つ資料であることを意味します。 追加基準として、完成度や完全性において卓越した資料、独特で稀に見る資料であることなどがあります。
日本軍「慰安婦」関連の記録が持つ世界史的意義は、単に、戦争被害の悲劇性にあるのではなく、被害者が自らを記録してきたそのあり方、つまり、証言して理解され、共感をつくり出し、被害を克服していったというところにあります。日本軍「慰安婦」関連の記録は、人類の悲劇の歴史として誰もが記憶するべき第二次世界大戦当時、日本帝国が行った広範囲な戦争の悲劇をよく示す記録です。日本軍による「慰安婦」の被害は、アジアの人々だけでなく欧州人にも及び、女性だけではなく男性の被害者も存在しました。日本軍「慰安婦」関連の記録には、日本軍「慰安婦」制度の成立と運用、そして帰還などの実態を知らしめる歴史的記録、被害者の証言と彼女たちの治療に関わる記録、日本軍「慰安婦」被害者問題を解決するために取り組まれた市民社会運動の記録などが含まれています。私たちは、韓国、日本、中国、オランダ、台湾、インドネシア、フィリピン、東ティモール、イギリス、アメリカ、オーストラリアなどに散在していた記録物を集め、2,744件をユネスコ世界記憶遺産に登録するよう申請しました。これらの記録物に対し、ユネスコ登録小委員会は、「唯一かつ代替不可能」であると評価しました。
日本は「慰安婦」記録物がユネスコ世界記憶遺産として登録されることを妨害しています。
日本の一部の勢力は、日本軍「慰安婦」被害者が強制動員された事実と、性奴隷生活を強いられた事実を証明する、数多くの声を否定しています。大きな苦しみの中でも生き抜いてきた「慰安婦」被害者たちを追悼するために世界各地に立てられた「少女像」を組織的に傷つけています。このような行動を阻止しなければ、人権回復の記録として「唯一かつ代替不可能」である日本軍「慰安婦」関連の記録物も、破壊と毀損により失われる恐れがあります。ユネスコは、このように危機にさらされている日本軍「慰安婦」記録物を、必ずユネスコ世界記憶遺産として登録することを決定し、保存するべきであります。
ユユネスコは、日本政府や財政の圧迫に屈しないでください。ユネスコは、世界記憶遺産事業が開始された理由と目標を、いま一度思い起こしてください。世界に散らばっている重要な記憶遺産の保存に対する脅威、すなわち戦争や社会的変動、略奪や不法取引、破壊、不適切な保護施設などに対処しつつ、世界各国の記憶遺産へのアクセスを向上させるために始まったという事実を忘れないよう願います。
日本のような国際的影響力の大きい国が、弱者の記録を排除し、権限を占有しようとするこの間の企みに対しても、ユネスコは毅然と原則を守り抜くべきでありましょう。そのような姿が示されてこそ、ユネスコ世界記憶遺産の権威も世界市民から認められるはずです。
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